前回、頻用処方の一つである八味地黄丸(7番)を紹介
しました。アンチエイジングの漢方薬、ではなく正確には
体内に水分を留める作用を有する薬であるともお伝えしま
した。この7番を代表するカテゴリーが「補腎剤」で、
まだ2種存在します。
・六味丸(ロクミガン 87番)
構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮
・牛車腎気丸(ゴシャジンキガン 107番)
構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮
+桂皮+附子+牛膝+車前子
今回分かり易くするためそれぞれのグラム数は省略して
います。構成を7番と比べてみると違いが一目瞭然です。
・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)
構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮
+桂皮+附子
87番は7番から桂皮と附子を抜いたもの、107番は
逆に7番に牛膝(ゴシツ)と車前子(シャゼンシ)を足したもの、
なんですね。そりゃ、同じグループになりますわな。
桂皮と附子はどちらも温める効果がありますから、それら
を抜いている87番は「水分が不足し冷えがない病態」に
適応となることが分かります。水分が足りないと身体を
冷ますことができなくなるので、逆にほてりを感じたり
します。いわゆる熱中症のような状態です。
107番に追加された牛膝と車前子はどちらも下肢の
むくみや血流を改善する効能があるので、7番の適応で
下肢に不調を感じる人向け、となります。整形外科領域
では腰部脊柱管狭窄症によく使用されますが、もちろん
7番の適応であることが大前提です。
ちなみに107番の命名は牛膝と車前子の頭文字を
7番の別名である腎気丸の前にくっつけただけです。
87番は7番から2つ生薬を引いているので正確には
六味地黄丸と言います。附子は温めるだけでなく鎮痛
効果もあるので、7番と107番は冷えると痛みが
出る場合にも良いですが、そもそも配合量が少ないので
冬場ではさらに附子だけ追加して処方することも多い
です。
以前、参耆剤というカテゴリーも紹介しましたが、
漢方薬を整理して理解する際には、カテゴリーごと
に特徴を覚えることも有用です。