院長室

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漢方薬解説-18 十全大補湯

今回も大変メジャーな処方の紹介です。最近では抗癌剤の

副作用に対して使用されたりとか、西洋医学の現場でも

積極使用されている漢方薬です。

 

・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ 48番)

構成:人参3g+蒼朮3g+茯苓3g+甘草1.5g

+当帰3g+川芎3g+芍薬3g+地黄3g

+桂皮3g+黄耆3g

 

変なところで改行されている時は…お分かりですね?(^ ^)

そう、「十全」と言うだけあって10種の生薬から構成

されていますが、よく見ると実はこれまで紹介してきた

処方を合わせたものなんです。上段は四君子湯(75番)、

中段は四物湯(71番)です。75番は消化吸収を助け

元気を出させる薬で、71番は血を作り、血流改善に働く

薬でした。

 

つまり48番は消化器系と循環器系を守備範囲とする薬、

ということになります。食欲低下や疲れ、皮膚の乾燥、

冷えなどが適応になります。ちなみに中段までの構成を

八珍湯(ハッチントウ)と言います。保険薬にはないですが。

で、さらに下段の2つの生薬が追加されているので48番

は八珍湯加桂皮黄耆とも表現できますね。

 

その桂皮(ケイヒ)と黄耆(オウギ)ですが、それぞれは加温

作用と水分調節作用を有しますが、人参+黄耆はとても

相性が良く、人参の効果を高めます。この2つの生薬が

配合されている処方を一文字ずつ取って “参耆(ジンギ)剤”

と呼んだりします。48番は参耆剤の代表選手です。

 

桂皮が配合されることにより、苓桂朮甘湯(39番)が

内包されます。芍薬甘草湯(68番)もありますね。また、

完全ではないですが当帰芍薬散(23番)も入っています

ので、48番はめまいや筋肉の張り、むくみにも効果が

あります。一応地黄が配合されているので、胃腸に配慮は

必要です。

 

過不足なく広く効果範囲を得る美しい配合だと思いますが、

決して抗癌作用があるわけではないので、癌に48番!

とか、48番で免疫アップ!というのは拡大解釈です。

 

ちなみに十全大補湯の読み方ですが、“ダイホ” ではなく

“タイホ” ですのでご注意を。知らずに誤読するとちょいと

恥ずかしいよ。

2020年7月2日 木曜日

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