院長室

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なぜHbA1cを測定しないか

健康教室の常連さんは耳タコの話かと思いますが、ウチでは、

と言うか栄養療法では糖尿病の診断に用いられるHbA1cを測定

することはまずありません。意外と疑問視される、もしくは

HbA1c正常で安心している方が結構いるので改めて解説します。

 

健診などでHbA1cが基準範囲内だと、糖代謝は「A」判定に

なります。薬剤の効果判定なんかもHbA1cで行うことが多い

ですね。HbA1cは糖と結合したHb(ヘモグロビン)の割合です。

なのでHbの単位はgですがHbA1cは%です。血糖値が高い

時間が長ければ長いほど、糖とHbの結合率は上がるのでHbA1c

も上昇します。これをもって糖尿病の指標とされています。

 

Hbはタンパク質の一種ですが、タンパク質と糖が結合すること

を「糖化」と言います。HbA1cはHbの糖化率を見ているわけ

ですが、Hb以外のタンパク質にも糖化は起き、タンパク質に

よって結合のしやすさが違います。実はHbよりもアルブミンと

いうタンパク質の方が糖と結合しやすく、結合したものを

グリコアルブミンと言い、血液検査で測定することができます。

 

つまり、HbA1cが基準範囲内であってもグリコアルブミンは

異常値、ということが起き得るわけですね。グリコアルブミン

の方が高血糖に対して敏感ということです。保険の都合上、

HbA1cとグリコアルブミンを同時に検査することができない

ため、我々はグリコアルブミンを糖尿の指標とし、HbA1c

は用いないわけです。

 

またHbA1cもグリコアルブミンも高血糖を反映する検査

ですから持続する高血糖を見つけることは得意ですが、血糖の

乱高下は逆に見落としてしまいます。低血糖の時間があれば

糖化は進まないため、血糖乱高下では“プラマイゼロ”でHbA1c

もグリコアルブミンも基準範囲になってしまうことがあるから

です。血糖乱高下は諸悪の根源(笑)ですから見逃したくない、

なので1,5-AGという項目も検査しています。ただこれも保険

では同時算定不可なので同時に行う場合、実はクリニック負担

だったりします。(^ ^;)

 

一度糖化が起きると、そのタンパク質が分解されるまで糖化は

解除されません。しかも糖化したタンパク質はその機能を失い

ます。HbA1cが高いということはHb機能が低下するという

ことなので貧血症状が出ます。さらにさらに糖化タンパクは

最終的に有害な物質を出すので糖化の度合いを知ること自体は

とても重要です。ただHbA1cだけでは若干役不足、という

ことですね。

2020年5月18日 月曜日

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