毎年、だいたい年間で劇場・DVD併せて50本くらいの映画を観ますが、
この時期になると自分が観た映画で本年ベストは何かなーと鑑賞リストを
ニヤニヤ見ながら考えるのが楽しみだったりします。(暗いねー)
そんな楽しみを吹っ飛ばす勢いが本作にはありました。宇宙空間で作業中に
母船が大破し残り少ない酸素で無限の宇宙に放り出されてしまう…という
SFアドベンチャーっぽい設定ですが、むしろこれは「無」という密室に
閉じ込められたシチュエーションスリラーです。めっちゃコワイぞ、宇宙!
子供っぽい宇宙への憧れは綺麗に粉々になるでしょう。(笑)
無情で無慈悲、でも何者にも侵害されない宇宙から、しがらみや忘れてしまい
たい現実の待つ地球への帰還、それと絶望と希望をうまくシンクロさせる
脚本も見事ですが、特筆すべきは懲りまくっている映像でしょう。一体
どうやって撮ったのさ?!という映像の連発です。アルフォンソ・キュアロン
監督は前作「トゥモロー・ワールド」でも度肝を抜く映像を見せてくれました
が、今作はさらにその上を3段飛びで行く感じ。臨場感がハンパない。まるで
ユニバーサル・スタジオのアトラクションの様。行ったことないけど。
主要登場人物は2人ですが、実質主演のサンドラ・ブロックさんの独壇場です。
そしてその演技は圧巻。助演の名優ジョージ・クルーニーも味がありますが、
今回ばかりは引き立て役。なんと管制塔の声のみの出演でエド・ハリス。
エンドロール見てびっくりしましたが、そんな所にまで凝ってどうすんの。(笑)
そんなわけで楽しい映画ではありませんが、90分間に見所ばかりがギュッと
詰まった大作です。ちなみに原題は「Gravity」。映画を観終わると、わざわざ
「ゼロ」をつけた人のセンスのなさを感じることでしょう。