11日は名古屋で漢方の講演でした。今回は名古屋漢方習熟会という、ベテランの
先生方の会での講演でしたので、いつものメニューと違いこれからの漢方処方を
模索するという意味で、オーソモレキュラーと絡めた話をさせて頂きました。
却ってこちらが勉強させて頂くことも多く、有益な時間でした。ご参加頂いた
先生方、ありがとうございました。
このように講演活動をしていると、どうも漢方の専門家であるように認識されて
しまいますが、僕は専門医の資格も持っていませんし、そもそも“漢方家”を目指して
いません。漢方に限らず、その道を極めようとする心意気はもちろん尊いと思い
ますが、それはあくまで個人的な目標であって他人は無関係な領域です。患者さん
という相手がいる仕事である以上、「専門家であること」はむしろ優先順位は
低いのではないかなと思います。
患者さんは治すことを目指して来院するわけで、そのためのツールとして治療法は
存在します。漢方もその一つでしかないと言うことですね。漢方で治療している
と知らないうちに「漢方薬で解決する」のが当たり前になり、その後「漢方薬で
なければいけない」になり、「漢方薬を希望しない人は診ない」なんてことに
なりかねません。これはとんでもない本末転倒ですよね。ですから僕はスペシャリスト
であることよりもコーディネーターであることを重要視しています。
西洋薬も漢方薬も、AKAも遠絡もオーソモレキュラーも、さらには僕にはできない
治療も含めて完璧な治療法はないですから、長所と短所を知った上で患者さんそれぞれ
に最適なものを提案するのが医師の仕事だろうと思っています。もちろんそれぞれの
治療法のスペシャリストになれれば最高ですけどね。ということは医師に求められる
能力とは、まずは患者さんのニーズを最短距離で読み取る力、と言うことになるで
しょう。レアなことや複雑なことに挑戦すると、それがとても価値あることと勘違い
してしまうのは大いなる間違いではないかと思います。何を置いてもまずは“敏感になる”
センスを研ぎ澄ますことでしょうね。