院長室

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急性か慢性か、単純か複雑か

「先生、私の病名って一体何なんですか!?」

とドラマみたいに患者さんに詰め寄られることは実際には

あまりありませんが、病名なんて全然重要じゃありません。

たまに医師の中にもいますが、病名がつかないと治療が

できないというのは大きな間違いです。


大事なのは発症様式と経過です。

昨日から出現したのか(急性)、何年も前からあるのか(慢性)、

原因ははっきりしているのか(単純)、不明あるいは複数(複雑)

なのか。

昨日転んで頭を打って出た頭痛と、数年来の片頭痛では当然

治療が変わってきますよ、っちゅーことです。


急性で単純なものほど、言葉は悪いですが、医師は安心する

ものです。早く治る可能性が高いからです。もちろんこれには

生命が危ぶまれる緊急性の高いものも含まれますから、軽んじて

いいわけではありませんが、この場合最初から救急に搬送される

ことが多いので除外します。


やっかいなのは慢性で複雑なものです。これは症状が何であれ

すぐには解決しないので、医師は腰を据えて取り組むことになります。

我々の世界はある意味「治したモン勝ち」な所があるので、絶対に

この治療法しかない!なんて場合はありません。とくに慢性で複雑な

病態ほど、人それぞれで何がいいか分からないものです。


ただ一つ、共通して言えるのは、我々がしている行為は治療全体の

半分でしかないと言うことです。それ以上は立ち入れない領域というか、

患者さん本人しか変えられない部分なんです。

つまりどんな治療でも、患者さんが自分を変えよう、治そうとする意識が

あるかないかで大きく結果が変わると言うことです。患者さんのその力を

借りなければ、治癒に導くことはできないと思っています。


だから、「この治療をすれば絶対治る!」という治療者はあまり信用しない

ことにしてます。

2011年2月17日 木曜日

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