漢方薬は身体を温める効果を持つものが多く、これが西洋薬と
比較した時の大きな違いの一つでしょう。しかし、逆に冷やさ
なければいけない病態も、もちろん存在します。
・黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ 15番)
構成:黄連2g+黄芩3g+黄柏1.5g+山梔子2g
生薬4種のみのシンプルな構成ですが、これら全てが「冷やす」
効能を持ちます。正確には内部の熱(裏熱と言います)をさばく
のが得意で、即ち胃腸炎が最も良い適応ですが、皮膚の熱や
頭部の熱などにも効果があります。
よく応用されるのが、ほてりを伴うイライラや、熱感のある
鼻出血です。更年期症候群で頻用される加味逍遙散(24番)
に山梔子(サンシシ)が配合されていますが、これはほてりと
イライラを取る目的、ということですね。
4種とも同じような効能ですが、黄連(オウレン)と黄芩(オウゴン)
は特に併用されることが多く、この2つを主役にした薬を
芩連(ゴンレン)剤と呼んだりします。探すと結構ありますよ。
ここで注意すべきは15番はひたすら冷やす薬なので、副作用
として冷えてしまう可能性があります。もちろん元々冷え症の
方には使いづらい薬です。さらに冷やすと同時に「乾かす」作用
まであるため、例えば脱水症でほてりがある場合には禁忌です。
そこで15番の弱点を補う目的で四物湯(シモツトウ 71番)と
合体させた薬があります。それが温清飲(ウンセイイン 57番)です。
71番は血流を改善し、組織を修復させる作用がありますが、
配合される地黄(ジオウ)が潤す効能を持つので15番の副作用
を軽減できるわけです。
例えばアトピー性皮膚炎で、局所はかゆみも赤みもひどいけど、
冷え症であったり、皮膚がガサガサで乾燥傾向だったりした場合
15番は使いづらくなります。しかし57番なら15番の良い
ところを残しつつ組織も修復し、かつ副作用も抑えられるので、
意外と使用場面が多いです。この57番にさらに生薬を追加した
荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ 50番)、柴胡清肝湯(サイコセイカントウ
80番)なんて薬もあります。
とても有用そうな薬ですが、難点が一つ。芩連剤はチョー苦い
んです。(^ ^;)苦味そのものが熱をさます効果があるので
当たり前と言えば当たり前なんですが、何も言わずに出すと
嫌われて来院しなくなることもあるので(笑)、処方する際
には「こいつぁ苦いぜ!」と言うようにしています。