人参湯、四君子湯と来れば次はこの処方、六君子湯です。こちら
の方がはるかにメジャーですね。その構成を見てみましょう。
・六君子湯(リックンシトウ 43番)
構成:人参4g+蒼朮4g+茯苓4g+甘草1g+大棗2g+生姜0.5g
+陳皮2g+半夏4g
上の段が四君子湯ですので、六君子湯は四君子湯に陳皮(チンピ)
と半夏(ハンゲ)を追加した処方となります。四君子湯加陳皮半夏
とネーミングしなかったのは陳皮も半夏も君子並みの素敵な生薬
だったんでしょう。知らんけど。この手法は抑肝散でも見られ
ましたね。陳皮、半夏ともに嘔気嘔吐を抑える生薬ですので、
これらを加えて胃腸機能を回復させるという方法は常套だった
のかも知れません。
四君子湯はそもそも胃腸の薬でしたから43番はさらにそれを
強化していることになります。陳皮と半夏は痰がらみの咳にも
効果があるので、消化器系と呼吸器系の症状が併存する場合は
尚よい選択になります。注意点は半夏に乾燥作用があること。
副作用がなく効果が高いのが君子たる所以でしたが、半夏だけは
注意が必要です。口渇や舌の乾燥がある場合、基本的には適応外
です。こんな処方があります。
・小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ 21番)
構成:半夏6g+生姜1.5g+茯苓5g
妊婦のつわりによく用いられてきた処方ですが、よく見ると3種
の生薬全て43番に入っているものです。用量はこちらの方が多い
ので、嘔気嘔吐に特化した薬と言えるでしょう。また、こんな処方
もあります。
・二陳湯(ニチントウ 81番)
構成:半夏5g+生姜1g+茯苓5g+陳皮4g+甘草1g
21番に陳皮と甘草を追加していますが、これまた5種全てが
43番に配合されています。当然これも嘔気嘔吐の薬です。じゃあ
21番も81番もいらなくね?と思われがちですが、まあ僕もそう
思います。(オイ)言い換えれば43番は21番も81番も内包した
人参を主薬とした処方、となり、重宝される理由が分かります。
疲れて食欲がなく悪心があったり咳が続く、と来れば43番が
第1選択でしょう。もちろん口渇には注意です。
余談ですが、43番は海外でも臨床研究されている国際的にも
認知度の高い漢方薬です。そこでも高い安全性が報告されている
ので、安心して使用できます。さらに余談ですが、以前43番の
プロモーションで「りっくん」なるゆるキャラ(?)が作られ
ました。よく見ると顔が胃袋の形をしているというキモ…シュール
な造形で一部のニッチな界隈で人気を博したとかしないとか…。