利尿というのは尿を排泄しやすくすることで、そのための薬を利尿剤と
言います。身体の中に水分が多く溜まってしまったり、排尿機能が落ちて
しまった時に使用されます。対して利水というのは漢方用語で、水分の
バランスを整えるという意味です。そのための漢方薬を利水薬と言うのです
が、利尿と利水は全う概念です。
利尿はいわば外に出すだけの作用ですが、利水とは調節のことであり、もしも
体内に水分が多ければ排出が促進されるし、逆に足りなければ保持する
方向に作用します。つまり出すことも止めることもできるんですね。
そう聞くと、俄然利水剤の方が優秀だと思われますがそうではありません。
利水は調節、なのでこれが奏功する病態というのは水分が「不均一」で
ある場合なんです。心不全のように、心臓のポンプ作用が弱まって水分の
渋滞が起きているような場合は断然利尿剤の方が効果があります。
では水分の「不均一」は何をもって確認するかというと、それは口の渇きです。
不均一であると言うことは、余っている部分と足りない部分があるということ。
実際の症状では「むくみやめまいがあるのだけれども口は渇く」というように
水分の余剰症状と不足症状が併存するわけですね。二日酔いのときなんか、
頭痛がひどくて口が渇きますよね?これこそが水分の不均一の典型例と
言えます。
で、この利水剤の代表選手がこれまで何度も登場した五苓散なんですよ。
入梅から梅雨の季節に重宝しますが、気圧の変化による諸症状は水分の不均一
と関連があるために、この時期の頭痛に五苓散がよく効くんですねぇ。
頭痛やめまいと共に口の渇きを感じる方は、利尿剤ではなく利水剤ですね。