漢方医学の常識・非常識
色々な“切り口”を使って徐々に患者さんに合った薬を絞っていくのは紹介したとおりですが、よく「漢方薬は長く飲み続けないと効果は出ないんですよね?」と聞かれます。これは全くの誤解です。漢方薬の中には2000年以上も前に誕生したものもありまず。その頃はレントゲンやCTはもちろん、採血もできなければ血圧すら測れません。そんな時代だからこそ「症状は変わらないけど検査に異常はないので様子を見ましょう。」なんて悠長なことは言っていられないはずです。特に昔は抗生剤がなかったので、感染症が社会的な問題となっていました。一番身近なのは風邪ですね。風邪のような急性の病気に対して使用していたのですから、即効性がないわけがないのです。
ただ、現代の複雑化した病態に対しては、確かに時間がかかります。色々な症状に修飾されて本体の病原が見極めにくいからです。しかし、効果があった薬を飲み続けるのはまだしも、効果が出ないものを半年も1年も飲み続けるのはやはり間違った飲み方です。上で紹介したように、様々な“切り口”を駆使して長くても1〜2ヵ月で変えていくのがベターと思われます。一つの“切り口”で上手くいってしまう場合もあれば、別の“切り口”に変えてみたり、追加してみたら急速に良くなることもあります。
そしてやはり漢方薬も薬ですから、副作用が全くないわけではありません。一番多いのは下痢や胃部不快といった消化器症状ですが、むくみや血圧上昇、肝機能障害が見られることもあります。ただ、これらの副作用は西洋薬に比べると、はるかに頻度は低いです。